自由のドア

島根、ローカルジャーナリズム、ときどき鉄道

2017年巡り合えてよかった!5冊

毎年お決まりの読書記録。本が大好きなので、結構読む、というか向学のためにも、なるべく読むようにしているのですが、それでも昨年は少なかったかも…アウトプットに結果的に重きが置かれたので…50冊はいっていないような気がする…しかも何を読んだかも記録していない…多いに反省…!今年はもっと読むぞ&記録するぞ!

というわけで、巡り合えて良かった5冊をご紹介します。あくまで私が2017年に巡り合っただけで、必ずしも2017年に出版したわけではありませんのであしからず。

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1)自由からの逃走(エーリッヒ・フロム)

なぜナチズムが生まれ、人々に支持されたのかを描いた本。近代の大きなテーマでもある自由とデモクラシーを踏まえて考察してあります。答えに至るまでの説得力ある筆の進め方、そしてタイトルへの集約。しびれます。私もいつかこんな本を書きたい。時代と社会を鮮やかに切り取り、タイトルで一言で表すというそんな仕事をしたいと強く強く思いました。プロテスタントの影響や本質もこれまであまり知らなかったので、これを知らずに世界は語れないなと、そういう意味でも激しく学びになりました。

 2)個人化するリスクと社会:ベック理論と現代日本

 社会を個人化というキーワードで切り取った本。社会のリスクが増していることを扱っている本はこれ以外にもたくさんあり、読みましたが、一番しっくり来ました。個人化という概念は「家族・階級・企業などさまざまな中間集団から個人が解き放たれることにより、個人による自己選択の余地が拡大するとともに、これらの集団によって標準化されていた個人の人生が多様化し、失業や離婚など人生上のさまざまなリスクを個人が処理することを余儀なくされるという、一連の現象」(はじめにⅱ)です。さらに「正規の学校教育課程を卒業したからといって安定した職を得ることが保証されるわけではなく、結婚、離婚のみならず、就職、離職、再就職、再教育・再訓練もすべて自己責任で選択することを強いられる。ベックやアンソニー・ギデンズは、これによって、自分の人生のみならず自分自身が何者であるかというアイデンティティまでもが、そのつど再構成しつづけなければならないものになると述べている。「語り」によって自分の人生を構成し直す作業は、就職活動をいそしむ若者たちが日々経験していることそのものであろう」(はじめにⅲ)このくだりがかなり腑に落ちて、これからの私が取り組もうとしていることの前提となる問題意識、枠組みに出会えたこと、感謝しています。

3)われらの子ども(ロバート・パットナム)

トランプ大統領の誕生などを通して、米国社会の分断が見えたと感じていますが、その背景を描いている本。端折って言えば、子どもを、地域社会がわれらの子どもというのではなく、わたしの子どもという視点に陥ってしまっていることを指摘している本です。生まれた環境にかかわらず、あらゆる人が可能性を開くことができる社会でありたいと思いますが、それにしても、ここに描かれている世界は壮絶です。日本の未来も予知していると話題になった本でもあります。しかし、2017年のチョイスは、社会学、そして海外の人の本に偏ってますね…

4)永い言い訳西川美和

これまでこの巡り合って良かったシリーズ常連の西川美和。やっぱり私の感性にぴったりなんだもの。どこまでも「生きる」ということを肯定している。死を美化してすべての終わりにする物語は多いけれど、私は好きじゃない。だって死は終わりじゃないから。残された者はそれでも向き合って生きていかないといけない。今回も突然家族を失った人がどう自分の人生を取り戻すのかがテーマなのですが、それがよくある大好きな家族を失ったのではなく、愛が冷めてしまっていた夫婦という設定。しかも小説家(私は小説家じゃないけど、物書きという点では一緒なので、生きることと書くことの意味を深く考えさせられました)。ネタバレになってもアレなので詳しくは紹介しませんが「書いてくださいよ。書かなきゃ駄目よ」という台詞や「自分を大事に思ってくれる人を、簡単に手放しちゃいけない」という台詞、琴線に触れて涙なしでは読めませんでした。中でも、特にですね「ものを書く者の葛藤だけが、人間の、解決不能の孤独や絶望に寄り添えるのだ」という一文。当時、心の泉が涸れたときにこの本を読んだので、なんというか、もう号泣して、でも、この言葉を得て、やっぱり私はジャーナリストとして孤独と絶望を抱きしめて向き合って生きよう、やっぱり書き続けようと、立ち上がる気力をもらったというか、泉が再び湧いてくるのを感じたのでした。おっと、ここまで来て、当時この本読んで感動して書き殴ったメモが出てきたので、恥ずかしいですが。

人間は孤独だし、人生は無常だと思う。だからと言って意味がないわけではないし、喜びも幸せもあるし、一瞬一瞬を、そして関わった人を大切にして生きていくこともできる。すべての人は生きる意味があるし、幸せになれるし、希望はある。人生に幸あれ。Life is beautiful.

矛盾や葛藤、孤独や絶望は人生にはある。だからこそ、私は希望を描くジャーナリストでありたい。絶望の中に希望を見出すヒントを示したい。特にローカルに生きる人の。

 一人でアツく盛りあがってますね…イタいというか…恥ずかしすぎる…笑 まあいいか、これも人生の記録ということで。

5)舟を編む三浦しをん

 続いて小説。最近はほとんど小説は読んでいなかったのですが、心の泉が涸れたときにむさぼるようにして久々にたくさん小説も読んで、やっぱり本って、物語っていいなあと心から思いました。三浦しをんは人気作家ですよね。私は西川美和の複雑さの方を愛していますが、三浦しをんさんのシンプルで素直で読後感がほっこりなのも悪くないです(※ファンの方ごめんなさい、あくまで私の感性です)。この時期『神去なあなあ日常』と『舟を編む』を読み、舟を編むは辞書をつくる編集者の話で、やっぱり物を書いて表現するという共通することがあったので、心の泉の復活に役立ちました。