自由のドア

島根、ローカルジャーナリズム、ときどき鉄道

「ナツコ」に夢中!〜沖縄密貿易・表に出ないローカルヒストリー

読者の皆さま、ナツコって誰やねん、という感じかと思いますが… この本のことです。

ナツコ 沖縄密貿易の女王 (文春文庫)

ナツコ 沖縄密貿易の女王 (文春文庫)

昨日までの八重山ツアーのお共には、やはり、その土地にちなんだ本がいいなーと探し、応援団になっている松江市の私設図書館・曽田文庫でお借りしました。新聞記者時代、沖縄の琉球新報と合同企画「環(めぐ)りの海」で、与那国島などが以前密貿易で栄えた、という話を聞いていたので、興味もありましたし、密貿易という独特の言葉の響きに魅力も感じていたので、選んだのでした。

結論としては、読んでいて胸躍る、素晴らしい作品でした。正史には登場しない密貿易で活躍したナツコという一人の女性を記録したこと、そして、ナツコを通して、きちんと沖縄や八重山諸島の歴史、息づかいを記録したこと。沖縄にとって、社会にとって、非常に意義深い仕事だと感銘を受けました。ナツコを語るときの、沖縄の人たちの生き生きとした表情が発端だったそうで、そういう入り方も、とても共感できるなあ。記録がないため、人々の証言をたどり、紡ぐという大変な作業だったようですが、だからこそ価値もあると思います。私もこういう仕事がしたいですね…!さすが、第27回(2005年) 講談社ノンフィクション賞受賞、第37回(2006年)大宅壮一ノンフィクション賞受賞でした。

これまで、開沼博さんのフクシマ論と、渡辺一史さんの「北の無人駅から」、この2つを越える、島根の物語を生涯をかけて書きたいと勝手に思ってきましたが、また一つ目標というか、越えるべき本を見つけてしまった…どんどんハードルが高くなるな、我ながら大丈夫なのかしら。まあでも、目標は高い方がいい?ということで。しかし、最近、こもって原稿を書いているばかり、つまり、アウトプットばかりで、インプットをしていなかったのですが、忙しくても、やはり、インプットは必要ですね。いい作品との出会いは、己を奮い立たせてくれます。出会えて良かった。