自由のドア

島根、ローカルジャーナリズム、ときどき鉄道

街道をゆく(7)砂鉄の道・読書記

読もう読もうと思いながら、なぜか機会がなかった、司馬遼太郎の「街道をゆく」の島根関係部分。たまたま、人にもらったので、正月早々、読んでみました。テーマは「砂鉄の道」。たたらが盛んで、良質な鉄の産地であった中国山地、特に山陰について、司馬さんが実際に歩かれた紀行的なものと、文化的な考察が入り交じった13回のシリーズです。

司馬さんが訪れたのは、昭和50年ごろ。安来の和鋼博物館や、雲南・吉田の田部家、菅谷たたらなどが登場します。貴重な島根の記録。「出雲というのは、神話と現実が、歴とした現実の中でいりまじっている土地で、洞穴をくぐると不意に神話の風景がひらけたりして、かんが狂ってしまう」と書いてあります。これは、なんかわかるなあ。伊丹空港から米子空港とあるので、当時、伊丹ー米子便があったのかしら?空港の出雲そばは不味かったみたいです(笑)変わらない部分と変わる部分と、両方ありますね。

司馬さんさすが!すごい!と思ったのは、砂鉄から鉄をとるのに、大量の木炭を使ったことから「樹木が鉄をつくる」と言い切る鮮やかさや、そして、樹木の回復力が強かった日本だからこそ、鉄を育て、その鉄器の豊富さが、欲望と好奇心という「たけだけしい心」を育て、「自他ともに傷つけて血みどろな歴史」をつくってしまったのではないか、と提示する時空を超えたダイナミックな視点。思った以上に、韓国をはじめとした中国大陸とのつながりを意識し、アジアの中での日本という視点でとらえる視野の広さは、学びが多かったです。鉄は島根という土地や文化に連なる重要な要素とは思いつつ、これまで取材経験がなく、知識もほとんどなかったので、島根とは、出雲とは何かをあらためて考えさせられる、良書でした。街道をゆく、で、ほかにも島根関係あるのかな?探して読んでみたいです◎