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島根、ローカルジャーナリズム、ときどき鉄道

新しい観光「ボーダーツーリズム(国境観光)」が面白そうだ!〜八重山レポート2

南の離島・八重山諸島2日目に突入です。朝から船に乗り、同じ八重山諸島石垣島西表島に初上陸。西表島は、島中が森って感じの島です。ジャングルクルーズ体験しました。マングローブをはじめ、南方の植物の生命力あふれる感じ、すごいですね。侘び寂び文化?の山陰から来ると、落ち着かないような圧倒されるような…。そのあたりはまたあらためて。真面目に、午後開催された境界地域研究ネットワークJAPAN(JIBSN)の「竹富セミナー」のレポートをします。

「行き止まり」から「玄関口」へ

セミナーの中で「これ可能性ある、すごくおもしろい!!!」と、前のめりになったのが「国境観光」。「ボーダーツーリズム」とも呼びます。初めてお聞きになった方がほとんど…かな? 島国の日本では、国境を目にする、そもそも、国境自体を意識する機会など、なかなかありませんよね。その国境を、観光資源にして、人を呼び込もう、という新しいチャレンジであります。昨年、日本初のモニターツアーが行われ、セミナーではその報告がありました。

国境を接しているところなんて、日本にあるの?あるのです。対馬です!九州と韓国釜山の間にありまして、韓国との方が距離が近いのですね。モニターツアーは2013年12月。福岡発、対馬経由で、韓国釜山に泊まって、1泊2日で帰ってきます。22500円で、30人募集したところ、あっという間に埋まったそうです。企画は、JIBSNと九州経済調査協会の島田さんが共同で行い、ツアーの募集や実施は、JR九州旅行という形でした。

悩んだ末、対馬の魅力として、従来の「歴史」ではなく「パワースポット」を押すツアーにしたそうですが、アンケートは意外な結果。参加者の申し込みの決め手が、悩んでひねり出した「パワースポット」ではなく、対馬経由釜山であることや、国内と海外両方楽しめることなど「珍しい行程」だったのです。さらに、半数が再訪意向で、今回の募集を契機に興味を持つようになった、と回答。万人受けするものではなくとも、潜在的ニーズはあり、団体旅行商品として十分に成立する、という結論でした。これまでは「辺境」と位置づけられて「行き止まり」だった地域が、見方を変えれば「玄関口」になる。イイネ! 第二弾が来年3月ごろに予定されているとのことです。行きたいなあ〜

本当に対馬は危ないのか?

企画者であり、セミナーでも発表した島田さんの問題意識が、イケてます。対馬は、韓国人旅行客が急増して、一部で「対馬が危ない!」という言われ方もしています。島田さんは投げかけます。「本当に対馬は危ないのか?本当は『アツい』のではないか?」。人口3万人の対馬に、2013年は韓国人が18.2万人も訪れた一方、日本人は、島民の移動やビジネスを含めて23.6万人で、観光客は限られるそうです。「問題は、韓国人が来るから危ないのではなく、日本人が対馬に関心を持っていないことではないか」。その通りだなと、納得しました。

もちろん、課題もあります。対馬の食事や土産といった受け入れ体制の強化、安定価格にするためのスポンサー確保、情報発信、国境の町ならではの観光資源の発掘・開発、などなど。でも、定着したときのインパクトは大きいと思います。対馬での成功を受け、竹富セミナーの会場になっている八重山諸島でも、八重山と台湾との国境観光モニターツアー実施の方向で動いているとのことです。さらに、北では、最北端・稚内とロシアのサハリン間でも動きが。台湾もサハリンも行ってみたい…!対馬八重山稚内の3つを「ボーダーツーリズム」として統一したイメージで打ち出すことも目指すそうです◎

日本でほかにボーダーツーリズムできそうな地域ありますか? JIBSNの関係者に聞いたら、島根の「隠岐諸島」と言われました。そうかなとは思いましたが、、やっぱり?対馬ほどではないけど、確かに立地的にそうなのですよね。できたらいいなあ。あと、ボーダーツーリズムの対象地域を増やすこともですが、災害や戦争の跡地など人類の死や悲しみを対象にした「ダークツーリズム」も注目され出しているし、ボーダーとダーク、この2つで「新しい観光のカタチ」みたいな、コラボしながら広げていったりできないのかしら、とか…妄想が次々と(笑)

そうそう、ボーダーツーリズムの広がりの可能性を聞きながら、これぞJIBSNだな、と地味に感動しました。JIBSNは、研究と実務をつなぐ、ということと、実はつながりにくい辺境やローカル同士をつなぐ、という狙いで、発足した団体です。その方向に向かって、着実に進んでいるなあと、実感しました。こんな話を、日本の最南端&最西端に近い西表島で、稚内とか根室とか島根とか、これまた辺境から来た40人くらいが集まって、熱心に議論しているのです。道のりはそう簡単ではないのでしょうが、希望の芽を感じました。

夜の懇親会は、西表島の祖納地区の方々による、心温まるおもてなし。島の食材を使った手作りの料理や島の民謡などを披露してくださいました。ありがとうございました!